【イカ墨とタコ墨の違い】なぜ料理に使われるのはイカ墨なのか

魚の雑学
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イカ墨パスタをはじめ、イカ墨を使用した料理はたくさんありますが、タコ墨を使用した料理はあまり見かけません。

イカとタコは見た目が似ていたり、同じように墨を吐いたりと、似た特徴であるにもかかわらず、なぜ料理にはイカ墨しか使われないのか。

本記事では、こちらの理由について解説していきます。

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イカ墨、タコ墨とは

イカやタコは体内に墨を持っており、外敵に襲われた時に身を守るために墨を吐き出します

その墨の成分は、ユーメラニンという黒色のメラニン色素・脂質・たんぱく質・多糖類などです。

それぞれの成分含有量はイカとタコで異なりますが、イカ墨は多糖類を多く含むため海中で吐き出した時は固まった墨となります。

対してタコ墨は多糖類が少なく粘り気がないため、海中で吐き出すと煙幕のようにぶわっと広がります。

なぜイカ墨は料理に使われるのか

本題に入ります。

タコ墨ではなくイカ墨が料理に使われることが多いのは、主に3つの理由があります。

墨の質の違い

イカ墨とタコ墨は質が異なっており、タコ墨よりもイカ墨の質が料理に適していることが理由の1つ目となります。

この質の違いは、イカとタコの墨を吐き出す目的が異なることに起因します。

目的の違いとは、イカは自分の分身を作り出すことを目的としているのに対し、タコは目くらましをすることを目的としていることです。

イカはどろっと固まった墨を吐き出し、外敵に対してもう一匹イカがいるように見せることで自分の身を守ろうとします。

一方で、タコは煙幕のような墨を吐き出すことで、外敵に対して目くらましを与え自分の身を守ります。

そのため、イカ墨はどろっとした粘り気が特徴で、タコ墨はさらっとした水に近い質が特徴となっています。

このイカ墨のどろっとした粘り気がパスタなどの料理に上手く絡むので、タコ墨よりもイカ墨の方が料理に利用されている、ということになります。

一匹からとれる墨の量の違い

イカとタコは似てはいますが異なる生物なので、保有器官に違いがあります。

そこで、イカ墨が料理に使われることが多い2つ目の理由として、イカ一匹が保有する墨の量がタコよりも多いことが挙げられます。

個体差はありますが、イカ一匹からとれる墨の量は10g~13gであるのに対し、タコ一匹からとれる墨の量は8g程度。

一匹単位で見ると微量の差ですが、その差は数が増えるほど大きく開いていきます。

これに加えて、タコは水揚げされ陸にあがる段階で墨を全て吐き出してしまうことが多々あり、さらにタコ墨の量は減ってしまいます。

この一匹からとれる墨の量は全体の流通量にも大きく関わるので、結果的にイカ墨の方が仕入れ量が増え、イカ墨が選ばれることが多くなります

漁獲量の違い

イカ墨が料理に使われる理由として漁獲量の違いも外せません。こちらが3点目の理由です。

一匹からとれる墨の量から流通量の違いが生まれることは先述した通りですが、これに加えてイカとタコの漁獲量からも墨の流通量は変わります。

年ごとに漁獲量の変化はありますが、イカは100,000t~600,000tの漁獲量があるのに対し、タコは30,000tほどで推移しており、圧倒的にイカの方が水揚げされていることが分かります。

この漁獲量から分かる通り、イカ墨はタコ墨よりも入手しやすくなるため、料理にイカ墨が選ばれることが多くなります。

タコ墨は美味しいが高級食品?

このように「料理への絡みやすさ」という質の面と、墨保有量・漁獲量の違いによる流通量の面から、タコ墨よりもイカ墨の方が料理に使われることが多いです。

しかし、実はタコ墨もイカ墨と並ぶほど味がいいと言われています。

イカ墨はタコ墨よりも多糖類が多く含まれており、こちらがうま味成分であるため料理に合います。

一方で、タコ墨にはイカ墨よりもグルタミン酸が多く含まれています。このグルタミン酸は三大うま味成分のひとつに数えられているほどで、タコ墨にはうま味が凝縮されているといえます。

ではなぜ、タコ墨が使用されることが少ないのかというと、やはり流通量が少ないことが要因です。

一匹からとれる墨の量が少ないこと、タコの漁獲量がイカに比べて少ないこと。

この二点から希少性が高くなってしまうタコ墨は、イカ墨と同じ価格で仕入れることが難しく、市場に出回ることが少なくなります。

「だったら十分美味しいイカ墨でいいか」という理由で、一般的にはイカ墨が親しまれているといっても過言ではありません

ざっくりポイント
・イカ墨の方が料理に使われる理由は下記3つ
 ①イカ墨の方が粘り気があるため料理に絡みやすい
 ②一匹からとれる墨の量がイカの方が多い
 ③イカの方が漁獲量が多い
・タコ墨もグルタミン酸が多く含まれていることから十分美味しいが、希少性が高いため市場に出回らない
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