トビウオといえば、大きな羽を開き海上を勢いよく飛んでいる姿を思い浮かべる方が多いと思います。これは他の魚にはない特徴で、まさに海のグライダーという愛称が似合います。
しかし、魚であるのになぜ飛ぶことができるでしょうか。そもそも、なぜ海面から出て空を飛ぶ必要があるのでしょうか。そして、どれほどの距離を飛ぶことができるのでしょうか。
本記事では、こういったトビウオに関する疑問を解消していきます。
トビウオの飛行距離
トビウオは漢字で「飛び魚」と書き、英語では「フライングフィッシュ」というくらい飛ぶことを得意とする魚です。
体の大きさや種類にもよりますが、トビウオの飛行距離は約300m~500m。東京タワーの高さが333mなので、相当長い距離を飛行できるということが分かります。
さらに時速約60kmもの速さで海上3m~6mの高さを滑空しながら飛行します。
この速さは車の走行速度とほとんど同じなので、魚というよりももはや鳥に近いと言ってもいいかもしれません。
トビウオが飛ぶ仕組み
トビウオは翼の役割を担っている長い胸ビレや、下側だけが長い尾ビレを有しており、これらを利用して空を飛びます。
離水の方法はグライダーと同じ要領で、海面ギリギリをトップスピードで加速します。その後、尾ビレで海面を強く叩くことで空中に出ると同時に、胸ビレと腹ビレを広げることで風に乗ります。鳥とは違い、翼を羽ばたかせて飛ぶことはできないので、風に上手く乗れるか否かで飛行距離やスピードが変わります。
空中に出ればあとは滑空するだけ。着水寸前には尾ビレを海面に叩きつけて再度飛ぶことも可能です。
トビウオが空を飛ぶ理由
トビウオが飛ぶ理由は、主に天敵から身を守るためといわれています。
トビウオは泳ぎが他の魚と比べて遅いため、カツオやマグロなどのような大型魚に襲われた時に食べられてしまいます。
なので、水中ではなく空を飛んで逃げる技術と知恵を進化の過程で身に付けました。
逃走手段として空を飛ぶことを選択したトビウオは、魚類の中でも頭がキレている魚であるといえますね。
しかし、空中にはまた別の外敵である鳥がいます。
高く空を舞うと鳥に捕まることも多く、不幸なことに水中の外敵から逃げる技術を得たことで新たな外敵を生み出すことにつながってしまったということになります。
飛ぶための身体はだしにも最適
外敵から身を守るために海上を飛ぶトビウオは、いわばアスリートに近い体質で脂肪が少なく引きしまった体をしています。
なので、乾燥させたトビウオからとる「あごだし」は、脂肪分が少なくコクがあります。また、雑味がほとんどなく上品な味わいのだしとして知られています。
近年、かつおだしやこんぶだしと並んで人気が出始めたあごだしは、トビウオの生態だからこそ出せる味なのです。
・トビウオの飛行距離は約300m~500m
・海上3m~6mの高さを時速約60kmで滑空しながら飛行する
・離水方法は以下
①海面ギリギリをトップスピードで加速
②尾ビレで海面を叩くことで空中に出る
③胸ビレと腹ビレを広げることで風に乗る
・トビウオは外敵から身を守るために空を飛んでいる