ディズニー映画『ファインディング・ニモ』で一躍有名な魚となったクマノミ。
その小さな体と赤くきれいな見た目から、世界中で人気が高い魚です。
そんなクマノミといえばイソギンチャクを家として住む習性が特徴的ですが、イソギンチャクは毒を持つことで有名。
クマノミがイソギンチャクに住むことができる理由が気になった方も多いのではないでしょうか。
そこで、「なぜクマノミはイソギンチャクの毒に刺されないのか」について本記事で解説します。
なぜクマノミはイソギンチャクに毒に刺されないのか
クマノミがイソギンチャクの毒に刺されない理由は、クマノミの体から分泌される特殊な粘液にあります。
イソギンチャクは「刺胞」という毒のとげを発射する触手を有していて、こちらで身を守っているので魚はイソギンチャクに近付くことができません。
ですが、イソギンチャクが毒を発射するのにはある条件があります。その条件とは「海水よりもマグネシウム濃度が低いものに対してのみ発射する」というものです。
対して、クマノミの体は特殊な粘液で覆われており、この粘液は海水よりも高いマグネシウム濃度で構成されています。
したがって、高濃度マグネシウムをまとっているクマノミはイソギンチャクが毒を発射する条件に該当しません。
こちらが、クマノミがイソギンチャクに近付いたり触れたりしても毒に刺されることがない理由となります。
クマノミとイソギンチャクは相利共生の関係
クマノミとイソギンチャクはお互いにメリットがあるため、生きていくために依存しあっています。
このように異なる生き物がお互いのメリットのために共に生きていくことを「相利共生(そうりきょうせい)」といいます。
では、クマノミとイソギンチャクが共に生きるメリットは何なのか。それぞれ見ていきましょう。
クマノミのメリット
クマノミのメリットは、毒を持つイソギンチャクの近くに身を置くことで自分の安全を確保できることです。
前述したように、多くの魚はイソギンチャクに触れると毒にやられることを知っているので、近付くことができません。
ですがクマノミは毒にやられることがないので、外敵が近付いてくるとイソギンチャクの中に隠れることで捕食を逃れることができます。
したがって、クマノミがイソギンチャクに家を構えることのメリットは、イソギンチャクの毒を利用できることにあります。
イソギンチャクのメリット
昔はクマノミにしかメリットがないと言われいたようですが、今はイソギンチャクにも利益があることが分かっています。
ですが「これ」といったメリットはまだ判明しておらず、いくつかの利益があるとされています。
例えば、クマノミは取ってきたエサ(プランクトンや藻類)をイソギンチャクにストックする習性を持ちますが、そのおこぼれにあずかれる利点があります。
イソギンチャクは近付いてくる魚を毒で仕留める、いわば待つことしかできないので、エサを持ってきてくれる存在は大きいのです。
他にも、クマノミが住んでいないイソギンチャクよりも住んでいるイソギンチャクの方が、成長が2倍~3倍程度早くなったという研究の結果もあります。
これは、先ほど挙げたおこぼれのエサを捕食できることや、核分裂の頻度が上がることなどが理由とされていますが、結果的に成長しやすい環境が出来上がるのであれば御の字です。
このように、クマノミに住んでもらうことによるメリットはイソギンチャクにもある、ということが分かります。
※一見、クマノミのメリットの方が大きすぎる気がしないでもないですが、それでもクマノミを除外しないということは相利共生を受け入れているということです。
クマノミは日本に生息しているのか?
ここまで説明すると、クマノミとイソギンチャクを生で見たいと思う方も多いと思います。
ですが、クマノミは温帯~熱帯の温かい海水域に生息している魚です。
日本では主に奄美大島~沖縄県の地域に生息しており、鹿児島県より北で野生のクマノミを見ることはできません。
沖縄ではクマノミを見るためのダイビング体験も開催されているので、野生のクマノミに触れあいたい場合は沖縄に足を運んでもいいのではないでしょうか。
日本に生息しているクマノミの種類
最後に、日本に生息しているクマノミをご紹介します。合計6種類いるのでぜひご確認ください。
クマノミ
「○○クマノミ」ではなく「クマノミ」と名前が付いているのでややこしいですが、その他の「○○クマノミ」と同じようにクマノミの仲間です。
クマノミは縦に2本入った白いラインが特徴的。後述するカクレクマノミの縦ラインは3本なので、見分けは容易につけることができます。
カクレクマノミ
カクレクマノミは、『ファインディング・ニモ』で一躍有名になったクマノミの仲間です。
体長10cm前後の小さな体と、縦に3本ある白いラインといった可愛い見た目から、クマノミの中でも人気が高い種になります。
飼育魚としても人気が高いので、クマノミの仲間で何かを飼うならカクレクマノミをおすすめします。
また、カクレクマノミは「シライトイソギンチャク」「センジュイソギンチャク」「ハタゴイソギンチャク」などを住処にすることが多いです。
ハマクマノミ
ハマクマノミは、小さいときはカクレクマノミと同様に体に白いラインが複数入っていますが、成体になるにつれて1本になります。
共生相手である「サンゴイソギンチャク」の美しさと相まって、ダイビングなどでも人気が高いクマノミの仲間です。
トウアカクマノミ
トウアカクマノミは、背びれの後部に白い斑紋があるので見分けがつき易いのではないでしょうか。
サンゴ礁の海底にいる「イボハタゴイソギンチャク」を住処とすることが多いです。
セジロクマノミ
セジロクマノミは、その名の通り背中に白いラインが入っているのが特徴です。
共生相手は「アラビアハタゴイソギンチャク」という、触手の短いイソギンチャクを選択することが一般的です。
ハナビラクマノミ
ハナビラクマノミは、色が薄いオレンジ色の体とエラ付近の縦の白いラインが特徴です。
共生相手は「シライトイソギンチャク」と「センジュイソギンチャク」を選ぶことが多いです。
相利共生といえばクマノミとイソギンチャク
その他にも魚で相利共生をしている生き物は存在しますが、やはりクマノミとイソギンチャクはその代表格です。
沖縄に行かなければ野生のクマノミを見ることはできませんが、自然・生き物の神秘をぜひその目で見てください。
クマノミの可愛らしさとイソギンチャクの美しさで、感動すること間違いなしですよ。
・クマノミがイソギンチャクの毒に刺されないのは、クマノミの体から分泌される特殊な粘液が理由
・イソギンチャクが毒を発射する対象は「海水よりもマグネシウム濃度が低いもの」で、対してクマノミの粘液は海水よりもマグネシウム濃度が高いので毒に刺されない
・クマノミがイソギンチャクをすみかとするのは、毒を持つイソギンチャクの近くに身を置くことで自分の安全を確保できるため
・クマノミの仲間は世界中広い範囲の温帯~熱帯の温かい海水域に生息しており、日本では奄美大島~沖縄で見ることができる
・日本に生息しているクマノミは、カクレクマノミをはじめ6種類