塩辛い海水に生息している魚は、塩漬けされた魚のように塩味になってもいいもの。
ですが、実際は加工の段階で塩をかけない限り塩味になることはありません。
この不思議について、本記事では「魚のメカニズム」に沿って紹介していきます。
海水と淡水の違い
本題に入る前に、塩辛い海水と、川などの塩辛くない淡水の違いを整理します。
海水と淡水の最大の違い、それはどれだけ塩が含まれているかを示す塩分濃度です。
淡水の塩分濃度は0.1%以下でほとんど塩を含んでいません。対して海水の塩分濃度は3.4%と非常に高く、これは海水100gに塩が3.4g含まれていることを表します。
そして、海水域に生息する魚を海水魚、淡水域に生息する魚を淡水魚といいます。
海水魚が塩辛くならない理由
本題に入ります。海水魚が塩辛い水中にいても塩辛くならない理由は2つあります。
エラと腎臓を使って塩分を対外に排出しているため
海水魚は体内に水分を取り込むために、海水を大量に飲んでいます。
ですが、海水には塩分が多く含まれているので、塩分を対外に排出しないと塩分を摂り過ぎることになります。塩分を摂りすぎると、人間と同じく脱水症状を起こしてしまい、最終的に死に至ってしまいます。
そうならないために、海水魚はエラを活用することで体外に塩分を排出しています。
具体的には、まず海水を体内に取り込み、そのあと「水分のみを吸収→余分な塩分はエラを通して体外に排出」という形で過剰摂取を防止します。
他にも、尿も塩分を排出する役割を果たします。しかし、腎臓は高い塩分濃度の尿をつくることができないため、ごくわずかな塩分を排出する機能しかありません。
このように、エラと尿で塩分を対外に排出しているため、魚が塩辛くならないようになっています。
細胞膜が海水を体内に入れないように守っているため
例えば、刺身を海水に付けておくと少なからず塩の味は付着します。
しかし、魚の体表には多くの細胞があり、それらには膜がついています。
これを細胞獏といい、直接海水が体内に入らないように防ぐ機能を持っています。
そのため、直接的な塩漬け状態にならずに済み、塩辛くならないようになっています。
魚も生物なので塩分の摂りすぎはよくない
いかがでしたでしょうか。
海水魚も人間と同じく塩分を過剰摂取すると死んでしまう。
そのために、あらゆる手段を使って、塩分から身を守っているという事実は初めて知った方が多いのではないでしょうか。
刺身や煮つけなどは塩辛いと美味しくなくなるので、私たちが美味しく海水魚を食べられるのは、塩分から身を守るという生命維持活動をしてくれているから、という事実には感謝せずにはいられませんね。
海水魚も塩分を摂りすぎると死に至る
海水魚が塩辛くならない理由は2点
①エラと腎臓を使って塩分を対外に排出しているため
②細胞膜が海水を体内に入れないように守っているため