【浸透圧調整】なぜ海水魚は川で、淡水魚は海で生きられないのか

魚の雑学
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なぜ海水魚は川で、淡水魚は海で生きることができないのか?

この疑問を持った方は多いのではないでしょうか。

たしかに同じ魚類であるにもかかわらず、住む場所が全く異なるのは不思議ですよね。

実は、海水魚が海で、淡水が淡水でしか生きられない理由は、それぞれの体の構造が違うためです。

そこで本記事では、この疑問を解説していきます。ポイントは高校の生物基礎でも習う「浸透圧」です。

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浸透圧について

海水魚と淡水魚の生命維持活動において浸透圧は重要な意味を持ちます。

そのため、本題に入る前に浸透圧についておさらいしておきましょう。

簡潔にまとめると、浸透圧とは濃度が異なる二つの溶液が存在するときに、低濃度の溶液が高濃度の溶液へと流れ込み、濃度の差を均等にしようとする働きを指します。

浸透圧は、半透膜といわれる膜で仕切られていても低濃度溶液から高濃度溶液へと移動する力を発揮するため、半透膜に属する「細胞膜」で仕切られていても浸透圧は発生します

浸透圧と魚の関係

この浸透圧は、海水魚と海水、淡水魚と淡水でもはたらきます。ここで重要なのが「塩分濃度」です。

海水は塩分濃度が約3.5%と高いため、海水魚の体液と比較すると高濃度の溶液ということになります。

そして、魚は細胞膜(半透膜)で覆われているので、海水と海水魚の体液との間に浸透圧が働くことによって、魚の体液(水分)が体外へと放出されていきます。

対して、淡水は塩分濃度が0.1%以下と塩分濃度が低いため、淡水魚の体液と比較すると低濃度の溶液ということになります。よって、淡水は淡水魚の体内に入ってくることになります。

整理すると、魚は浸透圧が働くことによって、海水では体内から体外へと水分が出ていき、淡水では体外から体内へと水分が入ってくるということになります。

魚の水分調整機能

ここまで理解すると、あとは海水魚と淡水魚の水分調整の仕組みを整理すれば問題ありません。

魚も人間と同じく水分を失うと死んでしまいます。

そこで浸透圧の関係で体外に水分が放出される海水魚は、海水を大量に飲むことで放出されてしまう水分を補っています

しかし、海水は塩分を多く含んでいるので、体内が多量の塩でいっぱいになります。

それでは塩分過多で生命を維持できなくなってしまうので、海水魚はエラを使って塩分のみを対外に排出し、水分のみを取り込む機能を備えています。加えて、エラで排出しきれなかった塩分を少量の尿として体外に排出する機能もあり、この二つを使って塩分過多にならないようにしています

一方で、淡水魚は浸透圧の関係で体内に水分がどんどん入ってくるので、水分を多量の尿で体外に排出する機能を備えています

それでも、塩分がなければ魚は死んでしまうため、淡水魚はエラを通して少量の塩分を取り込み、それを体外に維持することで塩分を維持します。

図のようにまとめると、海水魚は海水を飲み塩分をエラと尿を利用して体外に排出する機能を、淡水魚は多量の尿で水分を排出する機能を持っているということになります。

このように、浸透圧によって行う生命維持活動を「浸透圧調整」といいます。

海水魚が海で、淡水魚が淡水でしか生きられない理由

遠回りをしてきましたが、結論に移ります。

海水魚が海で、そして淡水魚が淡水でしか生きられない理由はたったひとつ。

それは、サケような例外を除き、どちらか一方の浸透圧調整機能しか有していないからです。

そのため、例えばアジは海水を飲み塩分をエラと尿を利用して体外に排出する機能を持っているから海水で、アユは多量の尿で水分を調整する機能を持っているから淡水で生活しているということになります。

魚であれば体内の塩分濃度は同じなので、仮に淡水魚を海水に入れても浸透圧の関係で体外に水分は出ていってしまう。でも、エラを使って塩分を体外に排出する機能を持っていないがために、海水を取り込んでも塩分過多で死に至ります。なので、淡水で生活するしか生きる道がないということになります。

したがって、「魚は水中で生きている」というのは間違いではありませんが、「海水魚は海水で、淡水魚は淡水で生きている」といったように水の定義をはっきりさせた方が正確ということになりますね。

 

ざっくりポイント
・浸透圧とは濃度が異なる二つの溶液が存在するときに、低濃度の溶液が高濃度の溶液へと流れ込む力で、細胞膜を通してもはたらく
・海水は高濃度の溶液、淡水は低濃度の溶液に該当するため、海水では魚の体液が体外へ、淡水では魚の体液が体内へと移動する
・体外へ水分が移動する海水魚は、海水を飲み塩分をエラと尿を利用して体外に排出する機能を有している
・体内へ水分が移動する淡水魚は、多量の尿で水分を排出する機能を有している
・浸透圧に対して行う生命維持活動を「浸透圧調整機能」という
・海水魚が海で、そして淡水魚が淡水でしか生きられない理由は、どちらか一方の浸透圧調整機能しか持っていないため
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