縁起物として祝いの席ではおなじみのタイ。
魚の中の王様と評されることもあり、魚介類を代表する魚の一種です。
そんなタイですが、天然よりも養殖の方が多いことをご存知でしょうか?
加えて、同じタイでも天然物と養殖物では見た目や味などの特徴に違いがあることを知っていますか?
そこで、本記事では、天然タイと養殖タイそれぞれの漁獲量・見分け方・味の違いを紹介していきます。
※本記事でのタイは「マダイ」を指します。
天然タイと養殖タイの漁獲量の割合
日本ではタイは天然物と養殖物が流通しており、その中でも養殖物のタイが流通量の多くを占めています。
その割合としては、なんと養殖タイが約8割・天然タイが約2割。圧倒的に養殖タイが多いのです。
流通量が多いということは安く仕入れることができます。したがって、回転寿司チェーンなどで低価格帯で食べられるタイは養殖物であることが一般的です。
したがって、養殖のタイは私たちにとても馴染みのある魚だということになります。
天然タイと養殖タイの見分け方
※画像イメージ:養殖タイ
鮮魚店やスーパーでタイを購入する際は、天然物か養殖物かを見分ける必要があります。
もちろん、多くの場合は「天然物」や「養殖物」などのように記載されていますが、自分でも見分けられるように覚えておきましょう。
これから紹介する3つのポイントを総合的に見て判断するといいですよ。
※ポイントごとの画像は天然タイです。
尾びれで見分ける
尾びれの形は簡単に見分けることができるポイントです。
天然物は尾びれの先端がとがった「V」の形をしているのに対し、養殖物は尾びれが丸く長さが均等じゃありません。
この違いは、両者の生活環境の違いが要因で生まれます。
天然物は広大な海で生きているので障害物がほとんどありません。対して、養殖物は網に囲まれた生け簀(いけす)の中で生活しています。そのため、養殖タイは泳いでいる時に尾びれが網に触れて削れてしまいます。
したがって、尾びれが網で傷ついておらずきれいな「V」の形をしているのが天然タイ、尾びれが網で傷ついてしまっているのが養殖タイ、と見分けることができます。
体の色で見分ける
体の色でも簡単に見分けることができます。
天然物はきれいなピンク色をしているのに対し、養殖物は少し黒味がかかった色をしています。
これは、太陽光が直接体に当たるかどうかで違いが生まれています。
天然物は水深が深いところを泳ぐことが多いです。対して、養殖物は生け簀で育てられるため水深が浅く、多くの太陽光を浴びるので体が日焼けしてしまい黒くなります。
したがって、日焼けしていないきれいなピンク色が天然物、日焼けしてしまっている黒みがかった色が養殖物、と見分けることができます。
鼻の穴の数で見分ける
鼻の穴の数も見分けるポイントの一つです。
天然物は鼻の穴が二つに分かれていることが多いのに対し、養殖物は一つに繋がっていることが多いです。
現在この違いが生じる理由ははっきりしていませんが、ストレスが要因のひとつと言われています。
その他の見分け方に比べると少し難易度が高いですが、抑えておくとより確実に見分けることができます。
天然タイと養殖タイの良い点・悪い点
天然タイにも養殖タイにも、良い点と悪い点があります。ここでは主な3つを紹介します。
①価格面
養殖タイは漁獲量が多く、かつ一年中安定して供給ができるので価格が低いです。
一方で、天然タイは沖に出て漁獲する労力や安定して捕れないことなどから漁獲量が少なく、価格が高くなってしまいます。
②見た目
天然タイはきれいなピンク色で尾びれの形も整っているため見た目が良いです。
対して、養殖タイは尾びれの削れや色の黒ずみが目立ち、祝いの席では避けられてしまうことがあります。
③安定性
養殖タイは漁獲量・品質ともに年中安定しています。対して天然タイは安定していません。
天然タイと養殖タイではどちらが美味しいのか?
まず結論として、天然タイも養殖タイも「どちらも美味しい」といえます。
しかしながら、好みの違いやそれぞれの特徴の違いはあります。
天然タイは広大な海を泳いでいるため、養殖タイに比べて「筋肉質」「身が引き締まっている」「さっぱりしている」のが特徴です。
対して養殖タイは、天然タイと比べて豊富に脂がのっているのが特徴。これは、高カロリーな飼料をエサとしていることや、天然タイに対して運動量が少ないことが要因となっています。
天然タイも養殖タイもそれぞれの良さがあるため、一度食べ比べてみてもいいのではないでしょうか。
養殖でも質は高い
昨今では、技術の高まりを受けて養殖でも十分美味しい魚は多く存在します。
実際、タイも見た目から天然物に近づけようとする動きもあり、日焼けしないよう工夫する生け簀の開発などが進んでいます。
そのため、養殖物でも十分な品質は保たれていると言えますが、まだ消費者は天然物を求める傾向が強いことが分かっています。
しかし、これは養殖技術の向上、安心の担保などが消費者に伝わりきっていないことが大きな要因であるのではないでしょうか。
今後、海洋資源を守るためにも、食糧不足を補うためにも、養殖タイを始めとした養殖物をより浸透させていく必要が出てきます。
この記事を読んだ方も「養殖は美味しくない」などの偏見を持たず、ぜひ養殖タイを食べてみてください。
生産者がこだわりぬいたその味に、感動するかもしれませんよ。
・漁獲量は養殖タイの方が多く、約8割を占めている
・天然物か養殖物かを見分けるポイントは①尾びれの形 ②体の色 ③鼻の穴の数
・天然タイと養殖タイには、それぞれの良いところ・悪いところがある
・昨今の養殖技術の高まりを受けて、養殖タイは天然タイに劣らないほど美味しくなっている