人間にとって睡眠は生命を維持するうえで必要不可欠。そして、これは魚にも言えることです。
ところが、魚の中には泳ぎながら眠るなんともせわしない睡眠の取り方をするものが存在します。
本記事では、それがどんな魚なのか、そしてなぜ寝る時も泳ぎ続けるのかを紹介します。
泳ぎながら寝る魚の代表例
泳ぎながら寝る魚の代表例としてよく挙げられるのがマグロやカツオといった大型回遊魚です。
他にも、サバやイワシなどの小型回遊魚も泳ぎながら寝ています。
また、回遊魚とは、ある一定の場所に留まらずに海の中を泳ぎ回って生きている魚のことを指します。
なぜ寝るときも泳ぎ続けるのか?
では、これらの魚はなぜ泳ぎ続けながら睡眠を取るのでしょうか。
こちらは二つの理由があるといわれています。
酸素を取り込むため
魚も人間と同様に酸素を体内に取り込む必要があり、多くの魚はエラ呼吸で酸素を取り込みます。
一般的なエラ呼吸は、エラを開けたり閉じたりすることで水と同時に酸素を取り込み成り立ちます。
しかし、マグロやカツオのエラは開閉することができないため、エラ呼吸ができません。
その代わりに、口を開けて泳ぐことで水をエラへ送り込み、同時に水に含まれる酸素を取り込む呼吸の仕方をしています。
このように口からエラへ酸素を送り込む呼吸法を学術的には「ラムジュート換水法」といいます。
したがって、マグロは泳ぎ続けないと酸素を取り込むことができず死に至るので泳ぎ続ける必要がある。
こちらの理由が、寝ている間も泳ぎ続けている主な理由です。
沈んでしまわないため
上記に加えて、体が沈まないようにすることも寝ながら泳ぎ続ける理由のひとつです。
サメなどを除き、多くの魚は体が沈んでしまわないように浮き袋という器官を有しています。
ですが、マグロやカツオは浮き袋を有しているものの、それが未発達がゆえに泳ぐことを止めると海底に体が沈んでしまいます。
これを防ぐためにも、寝ながら泳ぎ続ける必要があるのです。
「回遊魚=泳ぎながら寝ている」は間違い
先程、泳ぎながら寝ることができる魚として大型回遊魚であるマグロやカツオ、小型回遊魚であるサバやイワシを挙げました。
しかし、全ての回遊魚が泳ぎながら寝るわけではありません。
例えば、小型回遊魚であるアジはエラを開閉させることができるため、エラ呼吸が可能です。
アジはサバやイワシなどと同じ青魚なので混同することが多いですが、呼吸法では大きく異なります。
なので、「ある特定の回遊魚はエラ呼吸ができないため、泳ぎながら寝ている」と覚えておきましょう。
人間に置き換えてみると・・・
「寝なくても済む体がうらやましい」
そう考える方もいると思います。たしかに、寝る間も惜しい時は誰しもありますし、約8時間の睡眠がなくなれば自由に使える時間も増えます。
しかし、マグロやカツオは寝なくていいのではなくて「動き続けないといけない」、ここが大きなポイントです。
マグロとカツオも同様に生物なので、睡眠は取らないと死んでしまいます。
寝なくていい代わりに動き続けないといけない体か、寝る必要があるが動き続けなくてもいい体。
どちらが幸せなんでしょうか…。
・泳ぎながら寝る魚の代表はマグロやカツオ(大型回遊魚)と、サバやイワシ(小型回遊魚)
・泳ぎながら寝る理由は以下
①泳ぎ続けないと酸素が取り込めなくなるため
②泳ぎ続けないと沈んでしまうため
・「回遊魚=泳ぎながら寝る」は間違い