「猫=魚好き」というイメージがある日本では、ついつい猫に魚を食べさせてあげたくなります。
しかしどんな魚でも与えていいわけではなく、特に青魚に関しては食べさせてはいけない分類に該当します。
本記事では、猫に青魚を食べさせてはいけない理由に焦点を当てて解説していきます。
大切な猫ちゃんのため。ぜひ最後までご覧ください。
・猫に青魚を食べさせてはいけない理由を知りたい方
・加熱処理をすれば食べさせてもいいか知りたい方
青魚とは?
本題に入る前に、そもそも「青魚」がどんな魚なのかを知っておく必要があります。
簡潔に説明すると、背中が青く・お腹が白い魚を総称して「青魚」といいます。
ですが、あくまでも”総称”であるため学術的な定義はなく、人によって判断が分かれる魚もいます。つまり、「ある特定の魚=青魚」という定義がなく、個人の裁量によって決められているのです。
一方で、特に意見が分かれることのない青魚もいます。例えば、アジ・サバは間違いなく「青魚」といって相違ありません。反対に、マグロ・カツオは青魚とするか否かで意見が分かれるところです。
そこで本記事における「青魚」は、特に猫に与えることの多いアジ・サバ・サンマ・イワシ・ニシン・ブリなどと定義し、マグロ・カツオは除くものとします。
※青魚の種類は以下の記事でご覧ください。
猫に青魚を食べさせてはいけない理由
それでは、本題に入ります。
前述した通り、猫にとって青魚は食べてはいけない魚の一種です。そのため、猫が欲しそうに青魚を見つめて来ていても食べさせてはいけません。
その理由は、青魚に多く含まれる成分として有名なDHA・EPAが関係しています。
青魚はイエローファット(黄色脂肪症)になりやすい
今では「健康に良い」とされ、馴染み深い成分となったDHAとEPA。
DHAはコレステロール値の上昇抑制効果や中性脂肪低下効果があり、EPAは血栓の予防や血管の収縮抑止といった効果が注目を集めています。
一方、猫にとってDHAとEPAは「イエローファット(黄色脂肪症)」という病気の原因となってしまいます。
DHAとEPAは「不飽和脂肪酸」の一種です。この不飽和脂肪酸は体内のビタミンEが分解する役割を担っているため、過剰に摂取すると体内のビタミンEが不足します。そしてビタミンEが足りなくなることにより、皮下脂肪が黄色く変色しつつ硬くなり、最終的にイエローファットに繋がります。発症すると、硬くなった脂肪がしこりとなり痛みが生じたり、被毛のツヤが無くなるなど、猫にとってはとてもつらい症状が出てしまいます。
▼イエローファットの主な症状
・しこりによる痛み
・痛みによる歩行困難
・発熱
・被毛のツヤを失う
・食欲不振
イエローファットは不飽和脂肪酸の過剰摂取によって起こる猫の病気です。そのため、不飽和脂肪酸であるDHA・EPAを多く含む青魚を食べてしまうことはつまり、イエローファットに直結する可能性が高いことと等しいため、食べさせてはいけないのです。
特にDHAとEPAを多く含む、アジやサバなどは注意するようにしましょう。
マグロ・カツオも青魚に含める場合は「チアミン欠乏症」にも注意
また、冒頭でマグロ・カツオは青魚ではない論調があるといいました。
確かにアジやサバとは違い、比較的DHA・EPA含有量が少ないマグロやカツオは猫に食べさせてもいい魚です。しかしマグロやカツオにもDHAやEPAが含まれていないわけではありません。多量に食べさせることは控えてください。
※マグロの脂身(トロ)に関しては、DHA・EPAがとても多く含まれています。同じマグロでも、脂身に関してはアジやサバなどと同様に少量でも食べさせないようにしてください。
また、マグロやカツオには「チアノーゼ」という酵素が多く含まれています。こちらも過剰に摂取すると、猫の体内のビタミンB1を分解し「チアミン欠乏症」を発症する恐れがあります。重症化すると、運動失調や神経失調などが起こるため大変危険です。
アジやサバのように絶対NGではありませんが、マグロやカツオも青魚に含めると考える場合は、食べさせるのは少量にしておきましょう。
▼マグロを食べさせる注意点の詳細はこちら▼
▼かつおを食べさせる注意点の詳細はこちら▼
焼く・茹でるなど加熱処理をした場合は食べさせてもいい?
このように猫にとって青魚はリスクが高い食べ物です。
そんな中で「焼く・茹でるなどの加熱処理をすれば食べさせても構わない」という声もありますが、それは間違っています。
確かに「チアミン欠乏症」の原因となる「チアミナーゼ」に関しては、加熱処理をすることで不活性化するためリスクを0にすることができます。
しかしDHAやEPAなどの不飽和脂肪酸に関しては、焼く・茹でるといった加熱処理をしても0になることはありません。結果的に、猫にとっては不飽和脂肪酸の過剰摂取ということになります。
おすすめとして、青魚と呼ばれることのある魚の中でも、比較的DHAとEPAが少ないマグロやカツオに関しては、生で食べさせるよりは加熱処理をすることでより安全な食べ物にすることができます。(もちろん、食べさせすぎるのは好ましくありません。)
一方で、アジ・サバ・サンマ・イワシ・ニシン・ブリなどは、DHAとEPAが多すぎるため加熱処理をしても食べさせるのは避けるようにしてください。
補足となりますが、魚は生で食べさせるよりも加熱処理をした方が「寄生虫リスク」も抑えることができるためおすすめです。加熱処理のメリットやポイントの詳細はこちらをご覧ください。
猫が青魚を食べてしまった!どれくらいの量なら問題ない?
最後に、猫が青魚を食べてしまった場合にどうすればいいのかについて解説します。
ご安心ください。確かに多量のDHA・EPAは猫にとってよくありませんが、ごく少量であれば問題ありません。焦って吐き出させようとすると、かえって猫にとってストレスを与えてしまうことになります。
ただし人間にとっての「少量」でも、猫にとっては不飽和脂肪酸が多分に含まれていることになります。
目安としては、刺身一切れ以下であれば問題なく、二切れ以上食べてしまっている場合は注意してその後の経過を見守ってあげるようにしましょう。
とはいえ、まずは誤って食べてしまうリスクを無くすことが重要です。青魚を調理する時や食卓で食べる時などは、猫ちゃんが食べてしまわないように気を付けるようにしてください。
青魚以外の魚介類にも要注意
ここまで解説した通り、猫にとって青魚は好ましくない食べ物です。
仮に飼っている猫ちゃんが青魚を欲しそうに見つめていても、決して食べさせないようにしてください。
特に、アジ・サバ・サンマ・イワシ・ニシン・ブリは絶対にNGと覚えておきましょう。
また、青魚以外にも、イカ、タコ、カニなど、猫に食べさせてはいけない魚介類はたくさんあります。大切な猫ちゃんのため。「何の魚がよくて、何の魚がいけないか」をしっかりと把握しておいてくださいね。
魚が好きな猫には「サーモン」がおすすめ!
それでも魚好きの猫ちゃんは多いですよね。その場合には、サーモンを積極的に食べさせてあげるようにしてください。
サーモンはオレンジ色の身をしていますが、実は白身魚です。身の色を赤くしているのは「アスタキサンチン」という成分で、猫の健康と美肌に良い効果を発揮します。また青魚のようにDHA・EPAが多いため、むしろ高血圧予防に繋がります。ビタミン類も多量に含むため、チアミン欠乏症の予防効果もあります。
魚の中では特におすすめのサーモン。猫に与える魚で迷ったら、ぜひサーモンを選ぶようにしましょう。※サーモンは鮭・マスと同義
また「魚も肉も好き」という猫ちゃんなら、チキン、とりわけ「ささみ」と「胸肉」がおすすめです。詳細は以下の記事でご確認ください。
・猫にとって青魚は食べてはいけない魚の一種
・青魚に多く含まれるDHAとEPAが猫の「イエローファット」発症の原因となる
・特にアジ・サバ・サンマ・イワシ・ニシン・ブリは少量でもNG
・マグロやカツオは少量であれば問題ないが「チアミン欠乏症」」に注意
・加熱してもDHAとEPAが0になるわけではないため注意が必要