チョウチンアンコウといえば、頭からぶらさげた光る提灯(ちょうちん)が特徴です。
光が届かない深海では、チョウチンアンコウのわずかな光でもよく目立ちます。
そんなチョウチンアンコウに関して、このようなことが気になったことはありませんか?
「どのようにして提灯の部分を発光させているのか?」
「どうして真っ暗な深海で光を放っているのか?」
本記事では、こちらについて解説していきます。
チョウチンアンコウが発光する仕組み
チョウチンアンコウは釣り竿のように長い背びれ(誘引突起)を持ち、その先端にあるエスカという発光器官を光らせています。
ですが、発光の仕組みはチョウチンアンコウが自前で光らせているわけでも、太陽光を集めて発しているわけでもありません。
チョウチンアンコウのエスカが発光しているのは、そこに住む発光バクテリアが光っているからです。
エスカはバクテリアを培養する役割を有しており、ここにかくまってもらう形で発光バクテリアが住んでいます。
エスカは半分透明の構造となっているため、中で光っているバクテリアが外から見た場合に光って見える、というのが発光の仕組みとなります。
この仕組みは、バクテリアはエスカの中に住むことができて安全になる、チョウチンアンコウはエスカを発光させることができる、といったようにお互いにメリットがある「相利共生」という形で上手く機能しています。
関連記事:【相利共生・片利共生・寄生とは】それぞれの違いと魚の例を紹介
チョウチンアンコウのエスカが発光する理由
チョウチンアンコウがエスカを発光させる目的は、エサを捕食するためです。
誘引突起の先にはエスカに加えて細長い糸のようなものをつけており、これが疑似餌の役割を有します。
まず光に集まる習性を持つ小魚を発光器官でおびき寄せ、そこでなびいている疑似餌を食べようとしたところをチョウチンアンコウが捕食します。
特に光が届かない深海ではチョウチンアンコウが発する光は非常に目立つため、このように活用することで効率よくエサを獲得することができるのです。
暗く広い深海には捕食対象のエサが少ないため、向こうから寄ってきてくれる仕組みを作り上げたチョウチンアンコウは深海で生き残るプロと言えますね。
発光させられるのはメスだけ
加えて、チョウチンアンコウの発光器官に関して特筆すべき点があります。
それが発光器官エスカを有しているのはチョウチンアンコウのメスだけということです。
実はオスにはエスカを持っていないため、光らせてエサをおびき寄せることができません。
さらにオスはメスに寄生して栄養を受け取りながら、最終的には精子バンクとしての機能のみを持つ外部器官になるという、衝撃的な最期を迎えることが遺伝子として決められています。
つまり、チョウチンアンコウのオスはメスと比較して生存能力が弱く、私たちが思い浮かべるような姿かたちのチョウチンアンコウは全てメスということになります。
※オスの衝撃的な最期については「【寄生と融合】チョウチンアンコウのオスが迎える末路とは?」をご覧ください。チョウチンアンコウについてさらに興味が深まると思いますよ。
・チョウチンアンコウは誘引突起という釣り竿のように長い背びれを持ち、その先端にあるエスカという発光器官を光らせている
・エスカはバクテリア培養機能を持ち、そこに住む発光バクテリアが光ることで提灯部分が光って見える
・チョウチンアンコウがエスカを発光させる目的は、エサを捕食するため
・光っているエスカで魚をおびき寄せ、さらに糸のような疑似餌を食いついているところを捕食する
・発光器官を有しているのはメスだけ