未利用魚の廃棄は、ここ数年水産業界の大きな問題として注目されています。
特に魚を愛する文化が根強い日本国内においては、水産業従事者だけでなく一般消費者にとっても他人事ではない問題です。
そこで本記事では、未利用魚の廃棄問題と未利用魚の活用方法を掘り下げていきます。
一般消費者でもできる貢献があるので、ぜひ最後までチェックしてください。
未利用魚の廃棄問題
まず、未利用魚の廃棄量と未利用魚を廃棄することによって生じる2つの問題点を解説します。
未利用魚の廃棄量
未利用魚は漁港に水揚げすることなく廃棄されることが多いので、正確な廃棄量を算出することはできません。
しかし海面漁業や内水面漁業などを合わせた総水揚げ量のうち、約3割~4割が未利用魚として廃棄されていると言われています。
この情報に則った場合、毎年約100万トン以上が未利用魚として廃棄されているということになります。
これがどれほどの量かというと、2019年の海面養殖生産量91万トンと比較すれば想像しやすいのではないでしょうか。
つまり毎年養殖で生産される量と同じくらいの量の魚が未利用魚として廃棄されているのです。
このような膨大な量廃棄されている未利用魚は、以下のような問題を生じさせます。
廃棄問題①:貴重な水産資源の損失
未利用魚を廃棄することの1つ目の問題は、貴重な水産資源の損失です。
世界に目を向けると、魚の漁獲量(天然・養殖)は1950年以降増加し続けています。
一方日本国内はというと、1990年以降漁獲量は減少の一途を辿っており、ピーク時に比べて約3分の1となりました。
減少し続けているのは、地球温暖化・外国漁船の参入・漁獲過多など、様々な要因が絡んでいることが理由とされています。
このように漁獲量が減少し続けているということは、日本において水産資源が不足し始めているということです。
つまり漁獲される魚のうち3割~4割を占める未利用魚の存在は、ただでさえ不足している日本の水産資源の大きな損失に数えられるのです。
こちらが未利用魚を廃棄することの、最も大きな問題と言われています。
廃棄問題②:漁業従事者の利益減少
未利用魚を廃棄することの2つ目の問題は、漁獲従事者(漁師)の利益減少です。
漁師は魚を釣って市場に卸すことで、お金を稼ぐことができます。
したがって限りある時間の中で労力をかけて釣り上げた魚を廃棄することは、漁師にとって金銭的な損失ということになります。
「せっかく釣ったのに廃棄することしかできない」という現状は、一刻も早く改善されるべき問題だと言えるでしょう。
なぜ未利用魚は廃棄されるのか
では、なぜ未利用魚は市場に流通することなく廃棄されるのでしょうか。
その理由は「釣果が少量の場合」「市場に卸しても売れる見込みが低い場合」の2点が挙げられます。
廃棄される理由①:釣果が少量の場合
魚が廃棄される理由1点目は、釣果(釣り上げた成果)が少量だった場合に採算が取れず廃棄するケースです。
漁師は釣り上げた魚の全てを市場に流通させているのではありません。ここには「利益」という観点が必要になります。
利益とは売上からコストを差し引いたものを指し、水揚げしたあと魚にかかるコストとは主に輸送料です。
この輸送料は魚が大量であれ少量であれ基本的に一定なので、小ロットでは売上に対してのコストがかかりすぎることになり赤字になってしまいます。
つまりある一定量以上を水揚げできないと逆に赤字になってしまうため、仕方なく廃棄するしかなくなるのです。
廃棄される理由②:売れる見込みが低い場合
魚が廃棄される理由2点目は、何らかの理由があって市場に卸しても売れないことが見込まれ廃棄するケースです。
この理由として最も多いのは、日本人に馴染みがなく卸しても売れる可能性が低い魚であることです。
市場に流通させても売れないのであれば、コストがかかるだけで赤字になるため廃棄することを選びます。
他にも傷が付いていて商品として成り立たたない魚や、「規格外」と呼ばれるサイズが小さすぎる魚も、売れない可能性が高いので廃棄する選択をします。
特に巻き網などで色々な種類を大量に漁獲する場合は、売れる見込みの低い魚が多く混ざります。
この「売れる見込みが低い」という観点も、現時点では主な廃棄理由として問題になっています。
未利用魚の活用方法
一方で、未利用魚は活用次第によっては「廃棄するしかない魚」から「売れる魚」に変えることが可能です。
ここでは主な活用方法を紹介していくので、参考にしてください。
未利用魚の活用方法①:通販サイトや通販アプリで販売する
日本における魚の流通の仕組みはある程度固定されており、漁師から卸売業者や仲卸業者を経由して一般消費者のもとに届くようになっています。
しかし昨今インターネットの急速な普及により、漁師は通販サイトや通販アプリを経由して直接消費者に販売することが可能になりました。
このサイトやアプリを利用すると、値段を市場取引に委ねることもなく自分自身で決めることができるので、未利用魚でも黒字価格に設定することができます。
また市場では取り扱い不可能な、いわゆる「売れそうにない魚」でも自由に販売することが可能です。この際、冷凍加工など賞味期限を延ばす工夫をすればなお良しです。
登録などの手間がかかりますが、誰でも簡単にできる未利用魚の活用方法といえるでしょう。
調理方法なども合わせてサイト内に補足しておけば売れる確率も上がります。ぜひ検討してみてください。
未利用魚の活用方法②:新しいニーズを開拓する
「未利用魚はニーズが無い」という固定観念を持つことなく、新しいニーズを開拓することも活用方法の1つです。
例えば、武田食品冷凍株式会社が販売している「bau-bau」はその代表例といえます。
bau-bauは未利用魚にされることが多いエイ・ハモ・サメなどの高い栄養価に着目し、犬や猫といったペットのエサとして加工販売しています。
このbau-bauの事例は人用ではなくペット用に販売するという柔軟な考え方で、未利用魚のペット用エサという新しいニーズを開拓したといえます。
現在も通販サイトで購入が可能なのでぜひ試してみてはいかがでしょうか。
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未利用魚の活用方法③:ブランド化
最後に紹介する「ブランド化」は最も難易度が高い活用方法ではありますが、成功すれば最も大きな成果が見込めます。
その方法は、ある地域でしか食べられていないマイナーな魚をブランド化しファンを増やすことです。
ここではその代表的な例として、全国では馴染みのない「ひら」という魚を紹介します。
ひらは小骨が多く食べ辛い魚であるため廃棄されることが多いですが、「骨切り」という調理手法が古くから浸透する岡山県では定番料理として広く愛されている魚です。
そこで「ひらの味、小骨がなければ献上魚」というキャッチコピーも作りPRし、いまでは観光客が岡山の味として求めることも増えてきました。
このように全国では未利用魚でも、ある特定の地域では人気が高い魚は各地に存在しているため、それをブランド化すれば廃棄量を減らすことはできます。
「自分の地域では当たり前だが、他の地域では知られていない未利用魚」を上手く見つけ出すことができれば、ブランド化への第一歩です。
一般消費者は未利用魚を購入して貢献しよう!
このように未利用魚は活用次第で、廃棄量を大きく減少させることができます。
しかし企業や漁業従事者でもない限り、アプリでの販売やニーズの開拓をすることは難しいですよね。
そこで一般消費者ができる未利用魚の廃棄量削減への貢献は、積極的に未利用魚を購入することです。
例えば、未利用魚廃棄量の削減を目的として開設された「fishlle!(フィシュル)」は、未利用魚をミールキットにして販売する優良な通販サイトです。
他にも漁業従事者と消費者を繋げるCtoCアプリ「食べチョク」や「ポケットマルシェ」でも、”未利用魚”と検索すれば漁師などから直接購入することができます。
これらのサイトやアプリで販売されている未利用魚は、スーパーや鮮魚店で買う人気の高い魚よりも大量かつ安価で購入することができます。
販売者も決して不味い魚を販売するようなことはしないので、初めて見る魚を美味しく食べられることは未利用魚購入の大きなメリットです。
これまでよく目にする魚ばかり食べてきた方でも、社会貢献をしながら美味しい魚を食べられる”未利用魚の通販”をぜひご利用ください。
※未利用魚のおすすめ通販は「【未利用魚を購入する方法】おすすめ通販サイトとアプリを紹介」で詳しく解説しています。
・未利用魚を廃棄することは「貴重な水産資源の損失」と「漁業従事者の利益減少」に繋がる
・未利用魚が廃棄されるのは「釣果が少量の場合」と「売れる見込みが低い場合」である
・未利用魚の活用方法は「通販サイトや通販アプリでの販売」「新規ニーズの開拓」「ブランド化」など様々
・一般消費者は未利用魚を積極的に購入して貢献しよう