フグといえば、通常の姿よりも丸く膨らんだ姿を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
「かわいい」と言われることも多く、見ているだけで癒されますよね。
しかし、あのかわいい姿にもしっかりとした理由があります。
そこで本記事では、なぜフグは丸く膨らむのか、そしてどういう仕組みで膨らんでいるのかを解説していきます。
フグが丸く膨らむ理由
フグが丸く膨らむ理由は、決して自分をかわいく見せるためではなく、外敵から身を守るための自己防衛です。
具体的には、膨らむことによる「外敵への威嚇」と「外敵が自身を飲み込めない大きさへの変化」が主な目的とされています。それぞれ詳しく見ていきましょう。
外敵への威嚇
丸く膨らむことで通常よりも体が大きくなり、外敵を驚かせることで威嚇できます。
主に鳥類で見られる威嚇の方法ですが、魚であるフグも取り入れています。
こちらが丸く膨らむ、主な目的とされています。
外敵が自身を飲み込めない大きさへの変化
加えて、体のサイズを大きくすることで捕食しに来た外敵に食べられないようにできます。
なぜなら、「この大きさなら食べられる」と考えて捕食しにきた魚の目の前で喉を通らない大きさになることで、捕食対象から外れるためです。
…賢いですね。
ストレス
他にも、ストレスを感じた際に膨らむこともあります。
水族館で外的な危険がない場所にもかかわらず膨らんでいるフグを見かけるのはこのためです。
どういう仕組みで膨らんでいるのか
では、フグはどのようにして体を丸く膨らませているのでしょうか。
実は丸く膨らむ仕組みはほとんど風船と同じで、空気と水を体内に取り入れることで大きく膨らんでいます。
フグは特殊な胃を持っており、これを「膨張のう」といいます。
まず膨張のうに大量の空気と水を取り込み、そのあと膨張のうの入り口と出口を筋肉でふさぐことで、空気と水が外に漏れ出さないように栓をします。
したがって、フグが膨らむ仕組みは大きく膨らむ特殊な胃と、出口と入り口をふさぐことができる筋肉を持っているから、ということになります。
反対に、しぼむ際には入り口と出口の筋肉を緩めることによって、体外に空気と水を放出します。
また、フグは膨らむ時に邪魔になることから、あばら骨を有していません。
そのため、他の魚と比較して硬い筋肉(身)を有しており、こちらが内臓を守る役割を担っています。
毒を体内に持つフグがどうして狙われるのか
「でも、フグには毒があるから食べる魚はいないんじゃないの?」
たしかに、フグに猛毒があることを知っている人間がこの疑問を持つことは当然です。
例え無人島でフグ釣れたとしても、どう捌けば毒を摘出できるか知らないなら捕食対象にはなりません。
しかし、魚はフグも捕食対象になります。理由は単純で、「フグは毒があるから食べてはいけない」という理解が魚にはないためです。
魚も学習はするので、進化の過程や過去の経験から食べてはいけないものは理解していきます。そのため、フグを捕食すれば毒で死ぬことを本能で理解している魚もいます。
ただ、一般的にはフグに毒があることを魚は知りません。なぜなら、フグの毒が効くのは捕食した後なので、理解したと同時に捕食した側の魚は死んでしまうからです。
よって、「フグは毒があるから食べてはいけない」ということが学習できないというジレンマがあります。
いまだにどこに毒があるか分からないという理由で食べてはいけないフグがいるくらいなので、魚に理解を求める方が難しいのかもしれませんね。
・フグが膨らむ理由は、外敵から身を守るための自己防衛
・自己防衛とは、(1)外敵への威嚇 (2)外敵が自身を飲み込めない大きさへの変化
・フグが膨らむ仕組みは、大きく膨らませることができる特殊な胃に大量の空気と水を取り込むため