寿司ネタやおにぎりの具として親しまれているサケですが、その壮絶な人生をご存知でしょうか。
サケは産まれながらにして本能に忠実な魚です。
そしてその本能に従うがゆえに、悲しくも勇ましい最期を迎えます。
このサケが迎える人生の終わりについて、本記事で紹介していきます。
サケの人生
サケは川で卵からふ化したあと、豊富な栄養を求めて海へ移動します。そして海で成長したサケは、産卵のために再び産まれた川へ戻ります。
この川と海を往復することが、サケの人生において最も大きな意味を持っています。
そもそも、魚は基本的には川(淡水域)か海のどちらかでしか生きられません。
しかし、サケは淡水魚に分類されつつも海で生きていく機能を有しているため、どちらでも生きていけます。
このように魚の中では珍しい特徴を活かして、サケは大きなリスクを負いながら海と川を往復しています。
サケの人生の最期
本題に入ります。
サケが迎える悲しくも勇ましい最期とは、産卵を終えたあと死に至ることです。
サケは川の中でも上流に位置するところで産卵し、時期はあえて寒くなり始める秋以降を選びます。
この場所・時期を選ぶ目的は、海・川の下流・暑い時期と比べて卵を願う外敵が少ないためです。
このように卵がふ化する最適な環境を求めて、サケはわざわざ生まれ故郷まで戻ってきます。
さらに、川から海へ出たサケのほとんどは外敵に食べられたり人間に捕獲されるため川に戻ってくることができません。
その確率はわずか0.5%ほど。そのわずかな確率を潜り抜けたサケでさえも、産卵したあとほとんど例外なく死に至ってしまいます。
サケが産卵したあと死に至る理由
ではなぜサケは産卵後に死んでしまうのか。それは、力尽きてしまうからです。
サケは川を上り始めた段階から一切エサを食べなくなるため、海で蓄えたエネルギーのみを頼りに泳ぎ続けます。
なので、産卵場所まで到着した時点で体はボロボロですが、まだ子孫を残す責務が残っています。
そしてただでさえボロボロの体にムチを打って最後の力を振り絞り産卵するため、その直後に死に至るということになります。
これはメスだけではなく、放精するオスも同様です。
サケが産卵後にふるさとで死ぬことの意義
「じゃあ死なないように、エサを食べながら川を上ればいい」そう思いませんか?
しかしサケの死には大きな意義があり、それを成し遂げるためにエサを食べないことは遺伝子レベルで決められてることなのです。
その意義とは、自分が死ぬことで子供の成長を支えるというもの。
サケが海へ移動する理由は栄養を求めている、ということは先述した通りです。
しかし、ふ化してすぐのサケが危険な川を下っていけるはずもなく、ある程度大きくなるまでは産まれた場所で生きていきます。
ですが、川の上流にはそもそも生態系が少ないため、サケの子供のエサであるプランクトンも少なく栄養不足で死んでしまう。
なので、サケは自分を犠牲にして死骸をプランクトンに食べさせその数を増やし、結果的に子供のエサを作り出しているのです。
この自己犠牲ともいえるサケの子育ては毎年のように行われており、巡り巡ってこの恩恵を我々生態系が受けているということになります。
少しでも多くの卵をふ化させるためにリスクを負ってふるさとに戻り、そこでは自らを犠牲にして子供のエサをつくる。
確かにこの人生の終わり方は悲しくもあります。しかしそれと同時に、とても勇敢でかっこいい、素晴らしい人生だと思います。
「子供は目に入れても痛くない」とはよく言ったもので、どんな生物においてもそれは例外ではないのでしょうね。
・サケは産卵を迎えたあと死に至る
・死に至る理由は、川を上り始めた段階でエサを食べなくなり、最後の力を振り絞って子供を産むため
・サケが死ぬことの意義は、子供のエサであるプランクトンに自らの死骸を食べさせ増幅させること